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二×××年九月某日。
九月とはいえ、日中はまだまだ日差しが強く暑い日々が続いていた。
そんな暑い日曜日の昼下がり、一人の黒いスーツを着崩した中年男が、ポケットに両手を突っ込み、のんびりとした足取りで大通りを歩いていた。
男は立ち止まり、眩しそうに目を細めながら、雲一つ無い青く澄み切った空を見上げ呟いた。
「今日もお天道様が眩しいねぇ」
そして、胸ポケットからサングラスを取り出すと、その目にスッと掛けた。
黒髪にリーゼントで、一見恐持て風(こわもてふう)のこの男の名前は相原ショウ(アイハラショウ)。今から、周囲の人々には秘密のビジネスに向かう所だ。
その時、
「兄貴~!ショウ兄貴ぃ」
ショウは後方から、声を掛けられ振り返った。
この、息を切らせながら駆け寄ってきた、短髪金色の髪の、ショウよりも一回り以上は若い男の名は中田コウキ(ナカタコウキ)。ショウの弟分といった所だ。
「兄貴、おはようございます!お勤め御苦労さまっす!」
コウキは深々と頭を下げ、挨拶をした。
「おう、おはようさん」
ショウもいつものように、軽く手を挙げ挨拶を返す。
ショウが歩きだすと、その数歩後ろからコウキがついていく。
十五分程歩いた所で裏道に入り、【ミカミビル】と書いてあるビルの中へと入る。
ビルに入ってすぐにエレベーターがあり、二人はまっすぐそちらへと向かった。
タイミングがいい事に、エレベーターはちょうど一階で止まっている。
コウキがボタンを押し、ショウが開いたエレベーターに乗り込むと、後に続いて乗ったコウキが【B15F】を押した。
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