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「もうやめてええええ!!」
家中に響き渡るほどの絶叫と共に、神木理沙(かみき・りさ)は目を覚ましていた。
布団を勢い良く跳ね除け、上半身を起こしたところで、カーテンの合間から差し込む朝日を浴びて我に返る。
……あれは夢だったのか。
理沙は、何かを打ち込まれたはずの右腕を押さえた。
窓の外から聞こえるチュンチュンという鳥の鳴き声は、まるでそんな理沙をからかっているようでもあった。
「なんだよ……うるせえな……」
ボサボサ頭をボリボリと掻きながら、ゆっくりと体を起こしたのは、理沙の恋人である津田祐平(つだ・ゆうへい)だ。理沙とは同じ高校に通ってはいるものの、学年も部活も違う。そんな二人ではあったが、ふとしたことがキッカケで話す機会が多くなり、付き合い始めて早くも半年以上が経っていた。
今では、週に一度か二度はいずれかの家に泊まって夜を過ごす関係である。
ちなみに今回は、祐平の家に理沙が泊まった。
二人の関係はもうすっかり、お互いの両親公認である。
「ゴメン……なんかヘンな夢見て」
「夢ぇ……?」
祐平はまだ眠いのか、しきりに瞼を擦っていた。
そんな彼の裸の上半身を見つめて(下半身も裸だが。ちなみに理沙もだ)、理沙は惚れ惚れする。細身だが隈なく鍛え上げられた体は、さすがサッカー部といった感じだ。こんがりと健康的に日焼けしているのも、色白の理沙からすれば憧れだった。
……しかしそれにしても、かなりリアルで恐ろしい夢だった。
首輪を付けられ、両手両足を縛られ、得体の知れないことをされる……。
……予知夢だったり、しないよね……?
「まだ六時じゃねーか……」
気だるげに携帯電話を開いた祐平が、そう言ってまたも横になる。
今日は月曜日なので学校に行かなければならないが、確かに二度寝する余裕はあった。
とはいえ理沙は、祐平に続いて横になる気がどうしても起きずにいた。
また、あんな夢を見ちゃったらどうしよう……。
祐平に言ったら笑い飛ばされるかもしれないが、理沙にとってはそれは重大な懸念だった。
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