時。

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「拓也ーどうしたの? 大きな音し……」 母さんが来たときにはもう遅かった。 大男に腹を刺され意識がもう朦朧(もうろう)としていた。 僕の姿を見た母さんは泣き叫び立ちすくんだ。 僕の耳には悲鳴は届かない。 聞こえるのは弱く鼓動のうつ自分の心音。 そして、すべてがゆっくりになっている。 自分が倒れ込もうとしているのも 血が飛び散っているのも。 死ぬ時って本当にスローモーションになるんだな。 今やっと分かった。 「……」 僕は血で染まった床に倒れ込んだ。 ……――
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