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「於まつが何であろうかにゃ?」
藤吉は態と惚けていた。
「そっ、某のことを何か言っておったか?」
蜂須賀小六郎は照れながら藤吉に於まつのことを聞く。
しかし会えば毎度の如く、於まつのことを聞いてくる蜂須賀小六郎に藤吉はウザかったが、利用することも忘れてはいない。
「於まつも女子(オナゴ)。中々他家の男のことを聞けぬからにゃ。しかしにゃ、儂が小折へ行くと申せば、目を輝かしてくるにゃ。あれは誰かの話を期待する目にゃ」
藤吉は蜂須賀小六郎の意図を汲み取りつつも、態と惚ける。
「そっ、そうであろうか。某は、このようなことは全く苦手で」
「儂は色恋沙汰は得意にゃ。近江へ居た頃はよく都へ行かされたにゃ。都は色恋沙汰に溢れておるから、得意にならねば何かと不便になるにゃ」
「流石、日吉大社の樹下家へ連なる藤吉殿よ。頼りにしてます」
藤吉と蜂須賀小六郎の関係は主にこのような関係だった。
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