第16章 血に濡れる紅き軍馬

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後ろを振り返ると、 私の腕を掴む男をはじめとし、 どう見ても堅気には見えない人相の悪い男達が、 手に手に物騒な物を持ち、今にも襲って来そうな雰囲気を出している。 「さっきウチの若い者がその餓鬼に世話になったらしくてのぅ、 その礼に来たんじゃ。」 よく見ると、昼間時也君にやられた男達がいた。 その男達は、恨めしげに私の腕の中にいる時也君を睨んでいる。 「大人しくその餓鬼を渡してくれんか? そうすればアンタに危害は加えんから。」 口ではそう言っているが、 男にその気はないのだろう。 私を見る男の目は、好色そうな輝きを放っている。 それにその男の後ろにいる男達は、 この後私をどうするかという変態的な話で盛り上がっている。 ハァ、どうしてこうなるのかな。 時也君という難攻不落のルートを選んでから、 今まで色々と発展させようと努力してきた。 それで今日、ようやくあの言葉を聞けると思ってたのに・・・・・ この時男達は気づいていなかった。 唯の体から、空に昇る龍の如く闘気が立ち上っている事に。 「ん、何のつもり・・・・」 その瞬間、唯の腕を掴む男の見る世界が反転した。 唯が男の腕と服を掴み、 そのまま背負って地面に叩きつけたのだ。 そう、所謂背負い投げだ。 それも、もしこれが柔道の試合であったら、 完璧な一本となっていたであろう程見事なものだった。 「ぐえっ!!」 余りに突然な不意打ちだったので、 男は全く受け身が取れず衝撃をモロに受け、 蛙が潰れたような声を出す。 「・・・・・」 しかし唯の攻撃はまだ終わらない。 その細い腕のどこにそんな力があるのか、 唯は地面に叩きつけた男の足を掴み、 軽々と振り回し、今度は頭から地面に叩きつけた。 唯は終始無言で男の頭を何度も地面に叩きつけ、 最後はジャイアントスイングでぶん投げた。 その作業を終えた唯は、 パンパンと手を払い、若干血の気が引いている男達に向き直る。 刹那、この空間に殺気が充満し、 大気が怒りに呼応するように震える。 言うまでもなく、それは唯によるものだ。 それにより、男達は蛇に睨まれた蛙のように金縛りに陥る。 「・・せ・・・えせ・・・私の期待と、乙女のハートを返せ!!!!」  
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