プロローグ

2/3
前へ
/27ページ
次へ
 俺の人生の出来事をルーズリーフに一つ一つ箇条書きで書き出して振り返ってみても、作業を終えるのにおそらくはそう枚数と時間は要さないだろう。  もともと、俺の1日の出来事自体、起床、朝食、登校、授業、下校、夕食、就寝――多少の省略はあるにせよその程度で書き表せてしまう平凡な日常なのだ。  思い切って告白しようとしたら空から降ってきた別の美少女となぜか婚約する羽目になったり、はたまた親友から貰った木を彫って像を造ったら自称神様の美少女が現れたり――だなんてステキイベントがあるはずもない。  尤も、そんなイベントはあったらあったで大変だろうし、別段起こってほしいとお星様に願ったこともない。  ……ないわけではある――のだが、1つ悲しいのは、ラブコメに定番な幼なじみのツンデレ風美少女がいない、ということだ。というか女友達がまずいない。  小学生まではそれなりに仲のよい女友達もいたが、中学が別になってからは交流はない。高校に入ってからも話せる女友達がいないわけでもないけれど、一緒に遊びに行くような仲でもない。  SFチックなファンタジーに憧れたりラブコメの世界にトリップしたいと願ったりしているわけではない俺ではあるが、女子との交流が少ない――ない、というのは、青春という名の思春期を謳歌する一高校生としては些か残念な話である。  閑話休題。  話を戻すとしよう。  ともかく、そんな平々凡々な、悪く言えばつまらない、悪く言わなくても面白みに欠けてしまう人生を漫然として、日もそぞろにこうして生きている俺なのだが、別にこの日常が嫌いだというわけではない。  むしろ好きだ。  どこかの高校生のように、刺激を求めて池袋に引っ越す願望なんてありはしない。  平和に過ごせる世の中に一体何の不満があるというのだ。  刺激なんてゲームの中だけで十分。  炎の魔術師に追われる氷の美少女を助けたり、誘拐された電撃お嬢様を助けるべく敵の本拠地に乗り込んだり――だなんて、そんなヒーローみたいなことをする力も勇気も動機もないのだ。  知ってるか?  怪我したら痛いんだぜ?
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加