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俺の世界には白と黒と君しか色がない。
鮮やかなのは、君だけ。
「……起きてる?」
瞼を開けばまた君がいる。
君が眩しくて目を細める。
俺の目に君色が入り込む。
「起きてたよ。」
「ねえ、庭に出よう。」
「…どうして?」
滅多に外に出ない俺を君は外に出るようにさせたいみたいだけど俺は嫌だ。
外は部屋にいるより白黒だから。
白、黒、白、黒。
モノクロモノクロモノクロ。
つまらない。
いつか描いた鮮やかな景色は全て黒と白で塗り潰されてしまった。
「……虹が、かかってるの。」
彼女は俺に色を取り戻そうと必死だ。
そんな事、俺にとって無意味な事なのに。
だけど、彼女を傷付かせたくない俺は色を取り戻そうとするフリをする。
「じゃあ……行こうかな。」
彼女の期待に応えるべく返事をし起き上がる。
体が、重い。
にっこりと笑って俺の腕を引く彼女に、より一層色が増した。
庭に出ればやはり白黒。
ひどく殺風景だ。
「ああ……あれ、かな?」
「………うん。」
俺が指差した方には 白 と 黒 の 線。
「色はやっぱり見えないな。」
「そっか……。」
こうして君からすらも色が消える。
どんどん褪せていく色。
カラフルだった筈の君なのに、白と黒に染められていく。
どうして、どうすれば。
そう考えていけばいくほど褪せていく。
白、黒、白、黒
白
黒
白
黒
白
黒
白
黒
白黒 モノクロ モノクロ 白黒
狂ってしまいそうだ。
あお、きいろ、みどり、みずいろ、ぴんく
君色、君の色。
君の色の中にもまた、白と黒。
「……好き、好きだよ。」
赤。
きっとこの赤は君が好きという証だと、何故か思った。
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤。
一面に、赤。
赤い君に赤い俺。
染まる世界、赤。
「なんて綺麗な、赤。」
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