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窓から空間が歪むのを嶺人は目の端で捉える。
「うわっ暑そうだな」
連日、観測史上最高気温を着々と更新しているのを思い出し、嶺人は今日も更新したであろうと確信した。
嶺人の予想どうり外気温は50℃に迫る。
教室内の冷房は焼け石に水状態で役に立たず、肌は粘つくような暑さを感じていた。
「ったく暑いわね。アンタ、アイス買ってこい。氷のやつ」
襟元で切り揃えた金髪の小柄な少女、佐藤雪月が青眼で冷たく見据え、命令した。
が、声には覇気もやる気も微塵もない。
どうでもいいが俺を含め、制服から下着が透けていることを指摘してやる奴はいないのだろうか?
嶺人はピンクの花柄を眺めていると、
「れいと~、俺もよろしく~。金はお前持ちで」
毎日髪型の変わる寝癖人間、瑛太は無駄に大柄な体を机に突っ伏したまま、進言してきた。
「誰がいくか」
二人の願いを嶺人は力一杯断る。
しかし、
「吊るすわよ」
「雪月ちゃ~ん。この前嶺人君、実は~~」
「あ~~~、暑い、急にアイス食べたくなった。ついでだから二人のも買って来てあげるよ」
二人の脅しに屈し、棒読みで大きな声をあげた。
「いや~何か悪いな~」
「ホント本当、でも本当にいいの」
二人の念押しが立ち上がり歩く背中に刺さる。
「「「俺(私)達もよろしく」」」
クラス全員が便乗した。
誰一人悪びれないのはいかがな物だろうか?
悪魔しか居ない教室を出る嶺人の視界は少し歪んでいた。
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