作家・美沢遥

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「でも、ミキさんが自分からしゃべったんですか?」 正直先輩を疑いたくはないけれど、僕はずっとミキさんに支えられながら小説を書いてきた だからそれなりに僕はミキさんに信頼を向けている そのミキさんが自分の妹とは言え、美沢遥の正体を喋るなんて到底信じられないのだ 「あれ? 聞いてないのかな? 私が明日から美沢遥先生の担当者になるのだけれど……」 「………………はい?」 先輩が明日から僕の担当? 僕はあまりの状況の変化に頭がついて行かず頭上にはいくつものハテナマークが舞い踊っている 「だから……姉さんは他の新人さんの所に行くみたい」 先輩は今まで少し明るかった表情が一変し、寂しそうな表情を浮かべる 「姉さん…… 一人暮らしするの 遠い所に居る新人さんらしいから……」 そうか…… 姫澤先輩が泣いてたのってミキさんと離れ離れになっちゃうからなのか…… こんなときにどうしたら良いのか…… それは今の僕にはわからない 優しい言葉をかけたら良いのだろうか? 否 そんな無責任な言葉はかえって先輩を傷付けるだけだ…… ここは過ぎ去った方が良いのだろうか? 否 それは僕自身がその行為を拒絶している 後ろから抱きしめたら良いのだろうか? 否 抱きしめても先輩の涙はミキさんに向けての涙だ 僕が抱きしめた所で変わりはしないだろう だから僕は――― 側に居ることを選択した せめて先輩が悲しい時は側にいてあげたい 何も出来ない僕だけど側に居ることくらいなら出来る もし先輩が僕に助けを求めてくれるなら僕は喜んで自分に出来ることの全てを尽くそう 側に居てくれと言われれば、いついかなる時でも先輩の隣に僕は居よう それが数少ない僕の出来る事だから…… 先輩は僕の隣に座ったまま…… 俯きながら涙を零していた それでも僕は何も出来ない 僕には力も権力もない きっと力も権力もある人は直ぐにでも先輩を救うことが出来るだろう それが僕には出来ない自分の力の無さに 落胆し、 絶望し、 憤りを胸に秘めながら僕は涙を流す先輩の隣に居続けた それが少しでも先輩の悲しみを緩和出来たらと僕は願った
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