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空は誰も裏切らない
『悲しい時には一緒に涙を流してくれる
時には涙を暖かい光で乾かしてくれる
楽しい時には煌々と煌めく太陽が顔を覗かせるの
ね?
だから春斗はお空を好きになってあげてね?』
母さんはそう言って僕に空の素晴らしさを伝えてくれた
「この空はどこまで繋がっているんですかね?」
………………っ!?
僕は自分さえも予期せず母さんに言ったことを先輩に聞いていた
「春斗君は空が嫌い?」
先輩は慈悲深い聖母のような笑顔を僕に向けていた
僕は気恥ずかしくなり顔を背けた
「嫌いではないです……」
そんなぶっきらぼうな言葉を僕は返す
「嫌いにならないでね?
空はずっと、ずっと遠くまで繋がってるのよ
貴方が一緒にみたいと思う誰かも同じこの空を見上げているわ
空はね誰に対しても平等で優しいの……
だから春斗君も空を好きになってあげてね」
っ!?
その言葉はまるで母さんの言葉のようだった
所々違うところはあったにしろ、殆ど母さんの言ったことと同じだった
それをきいてしまったからなのか僕の頬には涙が一筋流れていた
「あっ………………」
とめどなく涙がただただ僕の頬を濡らしていく
母さんの面影を姫澤先輩に感じた
そう思ったら僕の瞳からは涙が流れ落ちつづける
僕は空が好きだった
この空は僕を見守ってくれているのだと
この空はきっと僕を受け入れてくれるのだと
そう
この空は僕の友達なんだとそう思っていた
「友達だったこの空は僕の両親を奪って行ったんです」
僕の両親は旅行中に飛行機での事故に巻き込まれて帰らぬ人となってしまった
それは不幸の産物以外に他ならなかった
飛行機に一筋の雷が落ちた
その一筋の雷は狙い澄ましたかのように動力部を直撃
飛行機は燃え盛りながら人里外れの山奥に墜落した
誰が悪い訳でもない
誰のせいでもない
ただ僕には雷を放ち空を愛していた僕の両親を奪って行った空を僕は許せない
いや、許したくない
だから僕は母さんが愛した空が好きだ
そして僕から母さんと父さんを奪った空が嫌いだ
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