動き始める歯車

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父と母は引き取った孤児である僕を腹を痛めて産んだこの様に大事に大事に育ててくれた 父は僕と一緒にキャッチボールやスノボーなどを色々教えてくれた 母は僕に家事と勉強を色々教えてくれた 僕は嫌々やっていた訳ではなく父と母にその選択肢を勧められ、僕自身が進んで教えてもらっただけだ それにスポーツも家事も勉強も父と母とやることで楽しかった そんな色々な思い出が増えていくに連れて僕は知らず知らずに父と母が好きになっていった 「―――って訳です すみません、面白くもない話しをつらつらとしてしまって……」 先輩は僕の人生の経緯を真剣に受け止めて居てくれた 正直この話はミキさんにさえ、まだしていなかった なのに先輩には話していた これは僕が先輩に信頼を向けたと言うことなのだろうか……? 自分の事のはずなのに自分でもよくわかっていない 「さっきも言いましたけど、僕は今の父も母も大好きですから大丈夫ですよ」 あれから黙ってしまった先輩に僕は笑顔を向ける 正直まだ母さんと父さんのことが吹っ切れてないことも事実ではある でも父と母も僕は大好きだ だから不満もない 「そう…… でも、悲しみは溜めては駄目だよ 私の前くらいは正直でいて……」 そう言って先輩は僕を優しく抱きしめた 「そんな…… 大丈夫で……」 大丈夫 そう思っていたのに僕の目尻から涙がこぼれ落ちていた 何故か先輩に優しくしてもらうことで僕は正直になってしまうようだ 先輩はそっと割れ物を扱うかのように僕を抱きしめてくれた 「すみません…… 少しの間胸を借りてもいいですか……?」 先輩は何も言わずに髪を撫でてくれた 僕は先輩の肩に手をついて子供のように泣いた 今までの溜めていた分が一気に押し寄せてきた 僕が泣き止むまで先輩は優しく撫でつづけてくれた
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