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僕は何も考えられず、黙ってハルヒコの言葉を待つことしかできない。
あそこで止まったとき、ちょうど二時頃だったよな。
言われて思い返す。
多分、二時あたりだった。
あの信号って、日付が変わった後はいつも、点滅信号だった気がするんだ。
「だけど、僕らは赤信号で止まっていたじゃないか」
だから、おかしいんだよ。
ああおかしいな、と返そうとした。
だからハルヒコ、君の言っていることはおかしいぞ、と。
それでも僕がそう言わなかったのは、口が動くよりも前に、ハルヒコの言わんとしていることを頭が理解してしまったせいである。
「でも」
今度は頭で考えるよりも早く、口が動いていた。
そのせいで、僕は「でも」に繋げるべき言葉を探す間、泣き声のようなふにゃふにゃとした声を垂れ流してしまっていた。
でも、なんだよ。
「でも、幽霊は退治したよな」
あんなので退治できるかよ。見ただろう、あれ。
ハルヒコは、とうとう身も蓋もないことを言った。
僕は、理由も分からないのに泣きそうだった。
そのせいで、そんな無責任なと声を荒げようとしたのを、
「あれって、だからあれは人間だろう」
そう、すがるように言って、電話を切ってしまった。
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