ぷろろ~ぐ

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   それは、まだ風も冷たい春先の昼間、学校の校門から入ってすぐに設置された、巨大な掲示板に張り出されている、いくつもの番号を前に、一喜一憂する姿を見るに……    ここが、合格発表の場であると、推測される。    その掲示板の前で、小さな男の子が、うるうると涙ぐみながら、手にした紙を握り締めていた。    男の子の身長は、周りにいる人たちに比べて、明らかに小さく、どう見ても小学校の低学年くらいにしか見えない。    周りにいる学生も、遠巻きにその男の子を見つめるだけで、声をかけるものは、誰もいなかった。    その時、人ごみを掻き分ける様にして、一人の女性が、その男の子に近づいた。     「ねぇ、ぼうや?どうしたの?お家の人と、はぐれちゃったの?」    不意に聞こえた、優しげな女性の声に振り向いた男の子の目に、その声の主の顔は、良く見えなかった。    涙で見えなかったのでは、ない。    その声の主の身長が、あまりにも……男の子にとっては、高すぎたのだ。    男の子は、涙を鼻水ごとコートの袖でぬぐうと、声の主に向かって、高々と叫んだ。  
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