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少女達の話し声に起こされ、俺は瞑っていた目を開けた。ふと、声のした方を見てみると、奈緒と翔子が最前列の席に座り、何やら楽しげに話している。
「もう、翔子ちゃん……からかわないでよ」
「あはは、ごめんごめん。でも、満更でもないんやろ?」
「違うったら!」
とりあえず、奈緒が翔子にからかわれているのだという事はなんとなく分かる。だが、肝心の何を話しているのかは、その前の話を聞いていないので全然分からなかった。まあ、つまりはそういう事だ。
そうして、くだらない思案に暮れていると、不意に教室の扉が大きな音を立てて開いた。そのあまりの急さに、思わず身構える。
「やーっと起きたのか。お前はよ」
だが、扉から教室内に入ってきたのは、いつの間にかどこかへ行っていた快晴だった。入ってくるなり俺を見て、文句を言ってくる様など、間違いなく奴の証拠である。
「お前、今までどこ行ってたんだよ?」
俺は構えていた腕を下ろしながら、とりあえず快晴に話を振る。
「あん? ああ、ちょっとトイレにな。それより、お前、四十分しかないのに、寝るなよな。あのまま朝まで寝てるのかと思ったぜ」
「んー、まぁいいじゃねぇか。ちゃんと起きたんだし。時間もまだ余裕あるんだろ?」
「あのなぁ……。まぁ、いいか。ご察しの通り、時間はちょうど良い感じだ。後、一分ってとこだな」
言って快晴は、手に持った携帯を突き出し、こちらに見せてくる。そのディスプレイにはデジタル表記で一時五十九分と記されていた。
「おお、完璧じゃん。俺の目測」
「いや、圭介よ。普通は目測に自信があろうがなかろうが、あのタイミングでは寝ないと思うぞ。むしろ、こんな状況下で寝るか?」
「仕方ないだろ。学校の机ってのは、座るだけで俺の睡眠欲を刺激するんだからよ」
「そういうもんか?」
呆れ気味に呟く快晴を横目で見て、俺は再び携帯のディスプレイへと視線をやった。すると、ちょうど時計の表記が、二時へと切り替わる。これでやっと丑の刻か、と思考の隅で思い、快晴を促そうとして、それは突然訪れた。
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