11人が本棚に入れています
本棚に追加
不意に今まで感じた事の無いようなくらい気持ち悪い、悪寒のようなものに襲われたのだ。それはまるで、巨大な波のように全身を……いや、この教室中を駆け巡った。
「な、なんやの……今の!?」
真っ先に口を開いたのは、奈緒をからかっていた翔子だった。
「なんだろな。物凄く嫌な感じだったけど……二人とも、無事か?」
次に口を開いたのは快晴。問われた内容に俺はすぐさま言葉を返す。
「俺は大丈夫だ。奈緒、大丈夫か?」
だが、奈緒からの返事は無い。表情を強張らせ、俯きながら小刻みに震えている。そこに、先程までの和みムードや余裕はなかった。
俺はそんな奈緒の傍により、肩をしっかりと抱いてやる。
「誰がここに居る事を望んだんだよ。しっかりしろ」
「う、うん……」
体を寄せてやった事によって、多少落ち着いたのか、奈緒は表情を和らげ、弱々しく返事を返してくる。
俺はそのままの格好で奈緒に寄り添いながら、快晴に視線を送った。すると、快晴も戸惑いを含んだ視線を、俺に向けてくる。
「け、圭介……どうする?」
「とにかく、ここはやばい。状況を把握……いや、そんな悠長なことは言ってられないか。急いでこの校舎から出た方がいい」
「あ、ああ……そ、そうだな」
「しっかりしろよ。いざとなったら、お前が翔子を守らなきゃいけないんだからな」
言われて快晴は、翔子に視線を向ける。その視線の先にはいつもの勝気な少女の姿は無く、ただ、奈緒と同じように表情を恐怖に強張らせ、怯える少女の姿があった。
「そうだな」
再び呟いた快晴の言葉には、もう恐れは含まれていなかった。
「よし。とにかく外に出よう。快晴、お前は翔子に手を貸してやれ。俺は──」
その刹那、俺の言葉を遮り、教室中に──いや、学校中に大きな音が鳴り響いた。あまりに大きすぎて瞬時には何の音だかは分からなかったが、しばらくして、それがガラスの割れる音だと気づく。それも一枚や二枚ではない。多量のガラスが一斉に割れる音だ。
「いやあぁぁぁぁ!」
突然の騒音に、怯える少女二人は叫び声を上げた。
「け、圭介。い、今のは!?」
「下から聞こえた! 行くぞ、快晴!」
「あ、ああ!」
とにかく、状況を知らなければならない。そう思い、俺は快晴を促し、教室から出ようとする。
「け、圭介君!?」
「ちょ、ちょー待ってよ。置いてかんといてや!?」
だが、入り口付近で怯える少女二人に引きとめられた。
最初のコメントを投稿しよう!