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「ちょっと調べてくるだけだって。すぐ帰ってくるから二人はこの部屋から出ずに、少しの間待っててくれ」
「そ、そんなん言わんといてや。快晴……傍に居って……」
「翔子。すぐ戻ってくるから。それまで待っててくれ。なっ?」
言って眩しいばかりの笑顔を向ける快晴。それに当てられ、翔子は少し気を取り直した。
「……分かった」
「じゃあ、行って来るぜ」
「翔子、奈緒をよろしくな」
未だ震えつづける奈緒の介抱を翔子に頼み、俺と快晴は同時に部屋を飛び出した。
俺たちの教室、二年A組の教室は、校舎の三階。『コ』の字の、ちょうど右上の点に当たる場所にある。そして、この学校には上下の線の先端に当たる部分に一つずつ、『コ』を『凹』として見た時、凹みの真ん中に位置する所にもう一つ、計三つの階段があった。
勢いよく教室を飛び出した俺と快晴は、迷う事無く、一番近い凹みの底にあたる中央階段を一気に駆け降りた。勢いそのままに二階を飛ばし、一階へと降り立つ。
二階を飛ばした理由は、外から割るのなら一階の方がやりやすいという心理が働いたからだ。先程調査して、俺たち以外に誰もいない事を確認していたからこそ、立てる事ができた仮説である。
そして、その仮説は正しかった。一階、中央階段の目の前にある職員室。曇りガラスによって区切られたその室内から、何やら妖しげな青白い光が漏れていたのである。室内に何かがあるのは一目瞭然だった。
「俺は前から。快晴は後ろから行ってくれ」
「分かった」
俺たちは小声で確認しあい、すぐさま所定の位置へとつく。
俺は息を殺し、ドアの中央部にはめ込まれた擦りガラスから中を確認する。
そこには無残に叩き割られた窓ガラスの破片が床に散乱する、見慣れた部屋の光景が広がっていた。だが、それだけである。部屋の中には窓を割った犯人や、青白い光を発する発光源といったものは一切見当たらない。ただ、不気味に彩られた室内の様子が広がっているだけだった。
やはり、状況を把握するには、部屋の中に踏み込むしかないようだ。
俺は快晴に横目で目配せする。それが踏み込みの合図だった。そのまま勢いよく扉を開き、周囲に大きな音を響かせる。そうして、部屋の中を見回そうとして、その視界は突然間に割り込んだ、何かによって遮られた。
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