2023人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
レミは全速力で走った。
辺り一面緑のない荒れ地を。
がむしゃらに駆けていた。
「バカ……」
頭に浮かぶ大樹のマヌケな面に向かって呟いた。
いつもそうだ。
脳天気でバカ。
変態な表情や言動。
そうやっていつも自分のことをごまかす。
確かにそれらは大樹の本質であることには違いない。
だが、大事なことは誰にも見せない。
全部隠す。
初めて大樹が泣いている姿を見た。
たまたま大樹の弱いところを見た。
「(どうして……)」
どうして彼はそんなにも自分を隠すのか。
何が彼をそこまで隠そうとするのか。
レミにはわからない。
人のことはうっとうしいぐらいに構うくせに。
自分自身のことはほっとく。
「ん゛っ!」
レミの足が止まる。
そして左胸をおさえる。
人工魔力原子の副作用だ。
「(私もながくない方だけど…………あなたに比べたらまだマシよ)」
自分の寿命の限界を改めて認識する。
最初のコメントを投稿しよう!