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空を見上げれば、輝く紅き蠍の心臓があった。
ずっとずっと変わらない輝き…。
それはまるで、変わらない自分を表しているようで…
「深月…見えてるかい?…深月が好きだったアンタレスがまた今年も綺麗に輝いてるよ。」
僕の呟きが君に届くかはわからないけど…。
深月は大人しい女性だった。
幼なじみだった僕らは、お互いに惹かれ合い、付き合い出した。
だが深月には心臓病を子供の頃から患っていたため、時々入退院を繰り返していた。
そんな深月も星が好きで、1番好きなのは自分の星座の蠍座だった。
「深月は本当に蠍座が好きなんだね。やっぱり自分の蠍座だから?」
「それもあるけど…やっぱり…憧れかな…。」
「憧れ?」
僕が聞き直すと、深月はちょっと俯きながら呟いた。
「うらやましいの。蠍の心臓のアンタレスの焔は消える事はないから。」
僕はハッとして深月を抱きしめた。
「大丈夫だよ。深月のアンタレスもずっと輝き続けるよ。」
何の根拠もない言葉だと、自分でも分かっていた。
だけど悲しむ深月を見たくなかったのが本音だった。
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