アンタレス編

6/15
前へ
/65ページ
次へ
「あら…まだお邪魔だったかしら?」 「変な気を使わなくても…大丈夫よ。ねぇ英明?」 そう言って深月はちらっと僕を見た。 「ええ。…あの…おばさん。おじさんに連絡は?」 「…もうすぐ来ると思うわ。」 話をしていた時、廊下をバタバタと走る音が聞こえ、病室の扉が開いた。 「み…深月!!大丈夫か?…母さんから聞いて…!!…英明君!!わざわざ来てくれたのか?ありがとう。」 「お父さん…大丈夫よ。…ちょっと苦しくなっただけ…。点滴も打ったし、楽になったの。…それと廊下は走らないでね。」 深月の父親はその場に座り込むと、息を調えながら何度も『よかった』と呟いた。 僕はふとさっきの深月の言葉を思い出した。 『こんな私でも後悔しない?』 二十歳になったら結婚しようと思う気持ちも、後悔しないと言ったのも嘘じゃない。 だが…今の深月を安心させるためにも、自己満足かも知れないが、今のうちに籍だけでも…と考えていた。 自分の家族には深月と付き合ってる事も、結婚したいと思ってる事も告げていたが、一切反対はされなかった。 幼なじみと言う事もあり、深月の病気も性格も知っていたからだろう。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加