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私は世界を相手取る
辛い、辛い、道のりだった。
道中で、協力者はほぼ死んでしまった。
先ほどまで隣で笑っていた理佳(りか)も、私を逃すため、散弾の雨に蜂の巣だ。
覚悟はしていた。
鳥籠の中にいれば、どれほど楽だったことだろう。しかし、それは私にとっては死よりも苦しいことかもしれない。
長い髪が邪魔で、手持ちのナイフでばっさりと切ってしまった。名残惜しいけれど、仕方がないこと。
理佳が言うには、この先の開けた場所にたどり着けば、少しは安全ということ。監視カメラやドローンに追われることはないから。
見えた。
暗い通路の先に、一筋の光。懸命に、力を振り絞って駆け抜けた。
目の前のそこは、今までと180度違う世界だ。先ほどまで響いていた警報音は、いつの間にか消え、大自然と、白服をまとった子どもの笑い声に包まれる。
とにかく一旦体勢を立て直さないといけない。
たえたえの息を整えながら、林の茂みに隠れることとする。
「疲れた。」
思わず溜め息がもれた。
入念にトレーニングを積んできたけど、私のスペックは元々それほど高くはない。学校では体育を休むことが多かったようだし、部活動もしていなかった。親はアスリートというわけでもない。私のDNAは平々凡々といったところ。
気を抜くと、それまで気にしていなかった痛みが襲ってきた。リロードするも、右手が震える。
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