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玉音放送の日、ぼくは十六歳で、下士官――特別幹部候補生兵長なるものになっていた。残り数班。ぼくの番ももうすぐだったはずだ。
放送の後、ぼくらはそれぞれの部屋に戻って漫然と時を過ごした。どうすればよいか、命令も指示もなかった。待機するしかない。
戦争は終わった。でも、どう終わるのか。ぼくら兵はどうなるのか。どうするのか。
何もわからなかった。除隊になって帰るのだろうか。どこへ。
誰が除隊させるのか。誰が軍を仕切るのか。
勝者である敵は、どこから来て何をするのか。
終わったというのはわかるが、負けたという実感がまだ不足していた。
負けるとどうなるのか。誰が何をするのか。誰がどうなるのか。
漠然とではあるが徐々に、何もわからないということがわかってきた。
やがて日が暮れた。
九州の夏の夜は蒸し暑かった。昨日までより蒸した。寝付かれなかった。
深夜、兵舎の外で奇妙な声がした。
誰かが何か怒鳴っているのか。
いや、泣いているのか。
笑っているようにも聞こえた。
気味が悪くなった。
正体を確かめたくて外へ出た。
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