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兵舎の南、かつて学校の運動場だった広場の中央に、声の主は居た。
満点の夏の星空に向かって何かをおらんでいる。
夏の星座がはっきりとみえる。降るような星空。天の川も見える。
星々のことを教えてくれた友はつい数日前の出撃で散った。
誰だろう。何を言っているのか。大きな声で何かを滔々としゃべっているのだが。
まるで聴きとれなかった。
それは、隣の班の班長だった。
衝かれたように星空に向かって何かしゃべっているのだ。
狂ったのか。戦争が終わったことが何か彼の心を乱したのか。
いつのまにか、ぼくの班の班長が隣に立っていた。
あれは朝鮮語だよ。彼は朝鮮人なんだ。
終わったから、隠す必要もなくなったから、誰はばかることなく、ああして母国語で叫んでいるのだ。
俺も朝鮮語は知らんから、何をしゃべっているのかは知らんが、何でもよいのだろう。
何でもかんでも、今まで使えなかった自分の言葉を、ああして発し続けているのだ。
終わったな。負けたんだ。おれたちは。
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