461人が本棚に入れています
本棚に追加
「おっとぉ、すまねぇが時間が押しているみたいでな! 質疑応答は以上だ、今からお前らには、この管制支部から、生活の拠点となる住居エリアに移動してもらう! さぁグズグズしないでついてきな!」
そう乱雑に言い放つと、クルリと踵をかえす黒薔薇。
灰色の髪を垂らす優男が取って代わり、二階の手摺り前へと歩みを進め、微笑み変わらず声を張るのであった。
「押さないで! 階段を使って順々に来て下さい! 二階の奥にありますデバイスゲートで個人データの認識の後、コチラで準備したリバースワールドでの住民票をお渡しします! 住居エリアにおける詳しい生活の基本体型は、のちほど係りの者から説明が」
ははーん。
あの傲岸ありきの、この紳士というわけか。
成る程、納得。
不信感を覚えない訳ではないが、ぞろぞろと動き出す群集。
紳士その人は、人々の流れをテキパキと指示しつつ、ああそうだ、と手を打ち口を開いた。
「あぁ、最後に! あ、移動しながら聞いてくれれば構いません。 私、ステアライズの総支部副取締役の“クライム=メイリング”と」
紳士はそう告げると、ズカズカとその華奢な肩で、然しながら風きって歩く黒薔薇に一言、声を掛ける。
矢庭に振り返る黒薔薇は、男を虜にすること必至の胸を堂々と張り、声高らかに。
「おおっと! 私としたことが、ステアライズ総支部取締役“カミナ=ロザリンド”だ!」
やや今更な自己紹介をするのであった。
最初のコメントを投稿しよう!