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「お前で最後か」
唐突に左方から発せられた、嫌に迫力の色を滲ませた凛とした声に俺は驚嘆。
辛うじて「ヒッ」てな情けない叫び声は咥内に押し止めてやったぜ。
俺のフォール勝ちだ。
「あぁ、そうみたい……ですね」
思わず敬語。
本能がそうさせたのか。
廊下の壁に寄り掛かる、細身もたおやかな美女――カミナが、俺に言葉を投げ掛けるものだから。
「どうした? あぁ、案ずるな、なにもそのゲートを通ったからといって死ぬ訳じゃあない。ホラ、急げ」
「……あ、はい」
対面で話してみれば先の刺々しさは幾らか緩和された、気がする。
むしろ態度、格好(今は壁にその身を委ね、腕組み。カッコイイぜ姉さん)から、なぜだろう、パーフェクトというワードが連想されて止まない。
まさか「貴女につかの間見取れてました」なんて言えるはずもなく、良い感じに勘違いなさってくれた女指揮官殿の配慮に、ここは肖るとして。
依然としてバチバチと電子音を立てるゲートとやらに手を伸ばす。
ここで静電気チックな痛みでも流れてくるかと力んでいた俺は肩透かし。
――すると、
「フフッ。痛みはないと言ったろう? お前、随分な臆病者だな」
等とカミナ。
声色から冗句と判別出来るものの、こりゃーイカン、男としてのプライドが! ってなもんで急いでデバイスゲートを通過する。
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