ステアライズ

3/20
前へ
/122ページ
次へ
  「では皆さんお待ちかねでしょうから。入りますよ」  真白いドア、そうして真新しさを思わす銀色の金属光沢を放つドアノブ。 「――なぁ、クライム」 「はい?」 「この部屋、出来たばっかなのか?」  ドアノブに手を触れた体勢そのまま、微笑みの申し子は唐突にそんなこと言い出した俺に、不思議そうに瞳を傾け尋ねてくる。 「どうして、そう?」 「あ、いや、大したことじゃないんだけど。ほら、ここの扉、ドアノブといい色といい、他と比べてやたらとキレイだから」  隣の部屋のドアを指差し、だからどうしたーってな非生産的な話をふった俺であったが、貴公子と称しても憚りないフランクなスマイルが、クライムから惜しみ無く向けられる。 「――まぁ、いずれ分かりますよ。では、行きましょう」  濁された、よな。  俺は小振りで頷き、クライムの後ろに。  捻られたドアノブから小気味良いガチャという音がした程合に、クライムは小さく言った。言いやがった。 「――言い忘れてました。中ではくれぐれも穏便に」  はっ、何のこっちゃ。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

461人が本棚に入れています
本棚に追加