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「では皆さんお待ちかねでしょうから。入りますよ」
真白いドア、そうして真新しさを思わす銀色の金属光沢を放つドアノブ。
「――なぁ、クライム」
「はい?」
「この部屋、出来たばっかなのか?」
ドアノブに手を触れた体勢そのまま、微笑みの申し子は唐突にそんなこと言い出した俺に、不思議そうに瞳を傾け尋ねてくる。
「どうして、そう?」
「あ、いや、大したことじゃないんだけど。ほら、ここの扉、ドアノブといい色といい、他と比べてやたらとキレイだから」
隣の部屋のドアを指差し、だからどうしたーってな非生産的な話をふった俺であったが、貴公子と称しても憚りないフランクなスマイルが、クライムから惜しみ無く向けられる。
「――まぁ、いずれ分かりますよ。では、行きましょう」
濁された、よな。
俺は小振りで頷き、クライムの後ろに。
捻られたドアノブから小気味良いガチャという音がした程合に、クライムは小さく言った。言いやがった。
「――言い忘れてました。中ではくれぐれも穏便に」
はっ、何のこっちゃ。
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