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「――――……ん」
頭が嫌にボーッとする。
何と言うか、とてつもなく長い時間寝たあとのような、そんなアンニュイな倦怠感。
まるで何か、耳元に膜でもあったかのように遠巻きに聞こえていた、ザワザワという人の群集の成す特有の喧騒。
ソイツは意識の覚醒に伴い次第に近郊、いやいや、それどころか周囲の音だとわかり始めて。
こりゃーいかん、人目に付くところで居眠りなんてしてられるものか、と身体を動かしにかかった俺であるが、
「――おうっ。……なんだってんだ?」
頑なに閉じていた瞼を開けると、そこには見たこともない景観が広がっていて、そりゃあ驚くこと至極当然ってなもんで。
「ど、どこだ、ここは?」
先ず何よりそこんところである。
どうしたことか、ここに来た経緯、動機なんぞ、思い当たる節すらない。
いや、むしろ――俺は今まで何をしていた?
不本意ながら俺が寝転がっていた床は、大理石を思わせるタイルからなっていて、このだだっ広い空間は、察するにエントランスとでも言ったところであろうか。
エントランスの左右には、二階へと続く階段も設置されていて、さながらホテルのロビーなんかを連想させる。
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