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ぐらっと立ちくらみを起こして、のりこはその場に膝をついた。
断続的な痛みがのりこを現実に引き戻した。
『──刺された?私は刺されたの?』
のりこは、ゆっくりと顔を上げた。
そこには、憎悪のこもった瞳で見下ろす、冷たい表情の人物の姿があった。
「ど、どう……して……」
のりこはかすれる声で問い掛けた。
「あなたが……あなたが悪いのよ……」
のりこを刺した人物は、囁くように呟いた。
やがてのりこは、立ち膝でもいられなくなり、その場に崩れ落ちた。
出血多量で意識が遠くなっていく中でのりこは、自分に向けられた恨み言を、念仏のように聞かされた。
そしてのりこは、理不尽な思いを残したまま、その短い生涯の幕を下ろした。
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