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女は、泣き叫んだ。
彼の白い体は無惨にも飛び散り、その中身も潰れてしまって、どう足掻いても助かりそうには無かった。しかし、彼女はそれを受け入れようとしなかったのだ。
いくら不注意とは言え、彼女が彼をそうしてしまったことには変わりはない。
女はとても後悔した。
あの時、しっかりと彼から手を離さなければこんな事にはならなかったのだ。
――嗚呼、どうして。
誰からも愛されていた彼の結末が、まさかこのような物になってしまうとは、誰が予期しただろうか。
勿論、女も彼の事を愛していて、その溺愛ぶりは知人達の間では良く知られていた。
そして今日も、彼女は彼を愛でるために様々な準備をしてきたのだ。
それなのに、何故……。
それとも、全てが運命によって決められていたのか。
飛散した彼のもとで、彼女は涙ながらにこう叫んだ。
「私のたまごぉぉぉぉおおおっっ!!!!」
「姉貴、何やってんの」
「玉子が、私の玉子があああ」
「それくらい別にいいじゃん……。」
「良くない!!この子はお昼のたまごかけご飯になる筈だったんだ!専用のお醤油まで取り寄せたのよ!」
「知らん。さっさと片付けとけよ……。」
「うわあああああああああんっ」
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