落下系

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  で、それでもなかなか着地しない。一時間は経ってたと思います……まあ、真っ暗闇の中、ずっと落ちているだけなんで、十五分位だったかもしれませんが。 不意に、頭に地球内部の図が浮かび上がりました。そう、大百科とかに載ってる、あの図。 そろそろマントルまで来てるんじゃないかな~なんて(笑) その内マグマまで到達してしまうんじゃ、と下らない想像を巡らせていると、段々眠くなってきてしまって。 落ちる感覚に体が慣れてしまって……最早無重力に近い感覚だと思います。 ふわふわ~って、これがまたちょうど良い具合に気持ち良いんですよ。 で、ぐっすり寝ちゃいました。もとから疲れていましたから。 そして、気がついたらベッドの上……なんて事はなく、まだ落ちてたんですよ。ああ、夢じゃ無かったのかとガッカリしたのを良く覚えています。 しかし、変化が訪れましてね。光が見えたんですよ、落ちる方向に。 そしたら直ぐ、周りが明るくなって。なんと空を飛んでいたんですよ! あ、正確に言えばただ落ちてただけなんですけど。 朝焼けが綺麗でしたね。地平線が見えるくらい高い所から落下するのって初めてだったんで、何とも言えない気持ちになりましたよ。 言わばパラシュート無しのスカイダイビングですから、私も落ちている間に不安になりました。普通だったらそのまま地面に激突して、即死ですからね。 でも、そんな心配も杞憂に終わりました。 また穴に真っ直ぐ落ちたんですよ。そう、この穴。 えっと思ったらまた同じ、何も出来ないままスーッと。 意味がわかりませんでした。混乱していると、アラーム音がスーツのポケットから流れました。 そういえば、仕事帰りのまま落ちたんだっけ、と携帯を取り出して、時間を確認しました。確か、朝の8時半ごろだったような。……あ、そうですね。設定そのままにしてありました。 で、アラームを切って、携帯をまたポケットに戻しました。さて、これからどうしたものか……と暫く考えました。 たまに伸びをしながらダラダラ考えてましたらね、また明るい空の上。 そこで、また携帯を取り出して時間を確認しました。時刻は9時ちょっと前。 私は体制を直して、下を見ました。そしたら、私が落ちた穴の傍に誰か立っていたんですよ。
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