一章

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きっかけは、仕事先であった飲み会だった。 あの屈託ない笑顔で「家に来いよ」って言われたら断れなかった。 ―…… 「終電ない!」 気付けば時間は、とっくに夜中の12時を回っていた。 途方に暮れていると、大好きな中谷さんが声をかけてくれた。 「なに?終電見逃しちゃったの?」 「あ、中谷さん。 そうなんですよ……。 仕方ないんで、タクシーで帰ります。」 お酒の酔いも程よく回り、大好きな中谷さんに声をかけられた嬉しさから、終電を見逃したという重大なミスも忘れかけながら答えた。 「お前、明日勤務なに?」 「休みですけど」 「……じゃぁ、家来る?」 飲み会も終盤に近づき他の職員たちは盛り上がっている。 そんな煩さの中、コッソリと行われた会話。 「……え?」 聞こえたけど、聞き返す。 だって、嬉しかったから。 「家来る?」 さっきと同じように返ってくる返答。 「いいんですか?」 「いいよ、俺の家近いし。 お前の家遠いだろ?」 「いや、まぁそうですけど」 車で約20分の所に住んでる私。 飲み会の店からだと最低でも30分以上はかかるだろう。 タクシー代ももったいないし、ここは甘えようかな?「じゃあ、お邪魔します。 明日の勤務大丈夫ですか?」 「大丈夫、夜勤だし。」 「じゃあ、本当にお邪魔します」 私は、嬉しさを隠し切れないまま笑顔で答えた。 .
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