一章

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福田 さゆり、それが私の名前。 4月から社会人になったばかりのぺーぺー。 仕事は介護施設で働いているが理想と現実の差にうんざりしながら働いているけど、今はそんなことどうだっていい。 だって隣に大好き中谷さんがいるから。 飲み会が終わった後、他の職員にバレないように二人別々に解散し後から合流した。 他の職員にバレたら何言われるか分からないから、という中谷さんの配慮だった。 「寒いなぁ………。」 そう呟いた中谷さんは私に手を差し出した。 「……なんですか?この手…」 「手冷たい!少し、温めてやー」 歩きながら手を差し出す中谷さんは早く!と催促するように私の手を取った。 「うわっ!お前の手、俺より冷たい!」 そう言って更に私の手を強く握る。 「そ、そうですか?私、冷え症なんですよ」 強く握られた手にドキドキしながら私も握り返した。 「ほら、俺の手袋貸してやる」 「……手袋持ってたならなんで手袋しなかったんですか」 「忘れてたんだよっ!いいから早く手袋しろよ」 遠慮がない私は、手渡された手袋を嵌めた。 でも、手袋いらないかも…… 中谷さんに握られた手がやけに熱いから。 歩きながら、二人で色んな話をした。 職場の話とか、家族の話とか。 飲み会行きたくなかったのが本音だけどきて良かったかも! 「……お前さ、今相当悩んでるだろ。」 唐突に、けれど真剣に言われドキリとした。 中谷さんの真剣な顔にじゃなく、悩んでいることを見抜かれたことにドキリとした。 「…え、あ……なっ中谷さんって今何歳でしたっけ?」 思わず話を逸らしてしまった。 「話逸らすな。 ちなみに、俺は24歳。」 24歳の後にハートマークでもついてそうな感じでしっかり答えてくれた。 「………若いですね」 「お前のほうが若いだろ。で、どうなんだよ?」 「何がですか」 アッサリ話を戻された私はふて腐れたように答える。 まぁ、そんなことしても無駄なんだけど……。 「さっきの話。悩んでるんだろ?」 「……はい」 観念して答える。 今は、その話したくないんだけどな…… 「そうか。まぁ、話は後だ……ほら、着いたぞ。」 そこには、介護職の給料だけでは払えないであろう高級マンションが建っていた。 .
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