幼少期

2/30
160人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
主人公の名前は『鬼風丸』。 キフウマル、と音読する。 鬼風丸は最後に死ぬ。 親友に殺されて死ぬ。 この物語は、そんな主人公の幼少期から始まる。 鬼風丸は、鬼である『角兵衛(カクベエ)』と人間の『お絹』という女性の間に生まれた。 「鬼風丸~!遊ぼ~!」 「うん!ちょっと待ってて!」 鬼風丸は急いでご飯を平らげると、元気良く家を飛び出した。 鬼風丸、五歳。 鬼を父に持つゆえ体は並外れて大きい、 というわけでもない。 確かに犬歯は人と比べると大きい。 角もある事はあるが、頭の髪の毛をかき分け探して、やっとポチっと角らしきものが二個あるぐらいである。 見た目は殆ど人間の子供となんら変わりない。 「待ちなさい!」 鬼風丸の襟首をがっしりと掴む手があった。 鬼風丸の母、お絹である。 「ちゃんと食べ終わったら片付けるって約束でしょ!」 お絹、 身の丈が六尺(約180センチ)ある。 肩幅もお絹の頑丈さを表現するようにガッチリとしている。 まさに『鬼の嫁』と呼ぶに相応しい体格の持ち主であった。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!