失恋スクーター

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失恋スクーター

  「だいっ、すき、だったんだぁ――……」  あたしは周囲なんか目に入らないで、延々と泣いていた。  今日、あたしはフられた。  半年付き合ったカレシに。  この人と結婚するんだー、なんて思ってたから、もう号泣。  それなのに、親にバカにされて、家を飛び出した。  末っ子だから甘いんだ、みたいに言われて、悲しいのとムカつくのと、もうごっちゃ!  家から少し離れた公園でべそべそしてたら、エンジンの音が近くで止まった。  砂のこすり音も近い。 「――家、帰るぞ――……」 「――――……」  いつもより低い声に、あたしは小さく頷いて、小さい声で、うん、って言った。  小さい頃から一緒にいる、兄。  違反だよ、なんて言葉を飲んで、海まで走ってくれた。 「ホントにね、ホントに大好きだったんだから――!」  あたしは泣いてて、兄さんの背中に背中を押し付けてた。  
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