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俺らって仲がいいんだよね。
だけどさぁ……これは、違うんじゃねぇか?
「あっ、いた!」
大量の荷物を持って楽屋入りしてきた奴が、今現在俺の悩みの張本人だ。
奴は俺の姿を見つけるといつもの運動音痴を感じさせないほど速いスピードでやってきた。
「おはようっ!!」
思いっきりタックルしてきた奴を避けるものの、長い腕に捕まって拘束された。
「苦し」
「いやー、今日も可愛いねー」
……可愛くねぇよ。
奴は何故か三十路で肌の黒いおっさん(つまり俺のこと)を可愛いと連呼する。
俺からしたら、顔だけはイケメンな奴に言い寄ってくる女の方がよっぽど綺麗で可愛いと思うんだが……
どうやら働きすぎて、ネジが一本抜けているらしい。
「あ、やっぱり肌乾燥してる。ちょっと待ってて」
頬っぺたをすり寄せて何か言ったかと思えば、さっき奴が自分で放り捨てた荷物のところに駆け寄っていった。
「これ、肌に良い化粧水と乳液なんだけど……」
どこでもドアみたいに奴の荷物から色んな道具が取り出されるが、それは俺のために買ってきたモノらしい。
俺、頼んでないんだけど。
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