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細川が死んだ後、気持ちが安定しなかった園田を、新木が慰めた時のことだ。
新木は言った。
お互い下の名前で呼び合えば、片方が死んでも、忘れることはないだろうと。
もちろん、その時にそう言ったのは冗談であった。
どちらかが死ぬなど、想像もしていなかった。
ただ、確かな現実として、ベンゼンに体の自由を奪われ、殺されそうになっている園田を、新木は倒れながら見ていた。
もし、ここで園田が死んでしまったら、新木は、園田をいつか忘れてしまう気がしたのだ。
まだ再会してから、普通に話してもいない。
特化して、大切な思い出も別に無い。
ここで園田が死んだら、いつか園田を忘れてしまう。
園田に恋をしていた、自分の心も。
それだけは、あってはならないと、新木は走り出したのだ。
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