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雷が落ちたかのような、凄まじい大きさの音の後には、あまりに対称的すぎる程の、無音の世界であった。
何もかもが静かすぎて、まるでこの部屋全体が、一枚の静止画であるかのようだ。
その静寂を破ったのは、新木が床に倒れる音だった。
新木の右半身には、大きな穴が空いていた。
新木の体を通して、向こう側の景色がちゃんと見えるぐらいだ。
それによって、銃も手放してしまったのか、銃は数メートル離れた所にある。
ベンゼンは、新木が引き金を引く寸前に、新木を仕留めることが出来たのだ。
現に、ベンゼンの尻尾は未だ無傷である。
「ま……真奈美?……」
園田は、依然としてベンゼンに体を掴まれたままで、いつ殺されてもおかしく無い状況だ。
ただ、今は自分のいる状況など忘れてしまい、目を大きく見開いて、倒れた新木を見つめることしかできなかった。
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