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「……ベンゼン……は?…………」
言葉を絞り出す新木の口の中は、血で真っ赤だ。
「死んだよ」
「そっか……
よかった………………」
新木は嬉しそうな表情をしているが、園田はもうベンゼンのことなどどうでも良かった。
「恭二…………アタシのこと……忘れない?」
そう聞かれた園田は、答に迷ってしまい、口をすぐには開くことができなかった。
迷っているのは、新木を忘れてしまうかどうかではない。
ここで、新木のことを忘れないと答えてしまえば、それは、新木の命を諦めることに値する。
それを口に出すことが、怖くて仕方がなかったのだ。
しかし、この姿の新木に対し、「死ぬな!」と、声を掛けることは、園田には口が裂けても出来なかった。
それこそ、新木の死を覚悟した、勇敢な行動を、けなしているように感じたのだ。
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