老人は星を視つめる

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 戦争がないとき、人々は命は大切だと声高に叫ぶ。天上人も人民も、みんながみんな同じ重さの命を持っているのだと声高に叫ぶ。  けれど一度戦争が始まってしまえば、天上人は戦場へ行かず、未来ある若者を送り込む。あの人々は戦場を見たことがないに違いない。だからこそ、あんなにも無惨な戦場へ若者をいくらでも送り込めるのだ。  彼らの中で命は同じ重さではない。自分たち天上人の命が最も重く、他はみんな虫けらと同じなのだろう。  筆を握る青年の家族も、銃を手にする少女の命も全てが同じ重さなのだ。  違う重さであるなど、ありえない。  けれど上役たちはまるで虫けらでも見るかのような目で彼らを見つめるのだ。  汚らわしいとでも言うかのように、それは恐ろしいほどの冷たい目。  子供は死んではならない。  私は子供を守って死んでいきたい。
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