1.悪戯メッセージ

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ーーもう話しかけないでください。みんなにからかわれるのが辛いです。 巻き込まれるのに耐えられません。 ずっと言わないでおこうと思っていたけど、私、りっちゃんのことが苦手です。 だから、今後関わるのはやめてくださいーー 「僕、沙穂ちゃんを困らせてたんかなあ……」 りっちゃんの震えた声が痛々しい。 「っていうか、このメールおかしいやん」 次第に腹が立ってきたのか、圭輔は吐き捨てるように言った。 知らなかった。あの大人しい沙穂ちゃんがこんなことを考えていたなんて。俺が気付けていれば……。 「確かに昨日、俺らは騒ぎすぎたよ。でもさあ、悪いのは俺とアイやのに、りっちゃんに文句言うのおかしない?」 「……まあ」 「りっちゃんが許してくれるなら沙穂ちゃん本人に文句言いたいところやけどな」 「そんな僕は」 「やめとけよ、事を荒立てんな」 りっちゃん本人が望んでないんだから。 「でも沙穂ちゃん来たら、めっちゃ態度に出してまいそう、俺―」 俺の声に重なって、教室のドアが開く音がした。 「沙穂がどうしたん?」 そう言いながら入って来たのは、アイと、その後ろに続いて那子。この空気を感じ取られてはならない。 女子陣に知られてしまえばF組の平穏は崩れてしまう気がする。 それがりっちゃんを更に傷つけることは、目に見えていた。 「べつに? 普通の世間話」 はは、と笑いながら、出来るだけさりげなく、りっちゃんにスマホを返す。 「わあ、森也どうしたん。今日めちゃくちゃ早いなあ」 「めちゃくちゃって、定刻に間に合っただけなんですけどー」 那子はいつも通りだ。それに僅かながら安心感を覚える。
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