1.悪戯メッセージ

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このメールは俺たち三人で留めておく。 そうすれば、表向きは何も変わらない。 「りーっちゃん」 「え!?」 満面の笑みで、アイがりっちゃんに近づく。それから彼女は、右のてのひらを上に向けて突き出した。 「スマホ見せて」 心臓が止まったのかと思った。明らかにその場の空気が凍った。 アイは何のつもりだ。気まぐれ? まさか。タイミングが良すぎる。いや、悪すぎるのか。 「えー? アイ、いきなり何言うてんのー?」 那子の、状況を飲み込めていない呑気な声だけが、教室の中に浮く。 「アイ、思春期の男子のスマホなんか見るもんやないわ」 「そうや。プライバシーの侵害や、やめとけ」 圭輔の言葉に便乗する。が、言ってしまってから気付く。第三者が止めるにしては必死すぎて不自然だ。 ……何やってんだ、俺。 「ええから見せてって」 りっちゃんの手から、あっさりとスマホが抜き取られる。 「あっ、ばか」 咄嗟に叫ぶ圭輔を、アイがじろりと睨んだ。その横で、那子がスマホの画面を覗き込む。 どうすることも出来なくなった俺たちは、ただ黙って彼女たち二人の反応を待つだけだ。
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