1.悪戯メッセージ

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アイは、どう動くだろうか。 シャーペンを動かしながら、考える。英語の授業中。 あれからすぐ、沙穂ちゃんが教室の中に入って来た。 俺たちは、できるだけ自然に。彼女に笑顔を向けていたと思う。だけど、溢れ出す不信感のせいで、彼女を見る目は変わってしまった。 歪められた沙穂ちゃんの姿。柔らかく笑う彼女の奥の、汚い心を見透かそうと、目を凝らす。 アイは、彼女の「おはよう」に返事をしなかった。沙穂ちゃんが何を思ったのかはわからない。 もしこれから、アイが沙穂ちゃんを無視し続けるとして。それは、二人の関係の亀裂だけに留まるだろうか。 ありえない。ただでさえ、この教室には七人しか居ないのだから。 一時間目の終了が、怖かった。次の休み時間。アイの行動で、F組の行く末が左右される。 何も知らない英語教師が、弾むような声で教科書を音読していた。 「那子ぉ、トイレついて来てー」  チャイムが鳴り終わると同時に声を上げたのは、アイだった。 「……ええよ」 笑顔で応える、那子の声が固い。教室を出ていく二人の背中を眺める。 彼女たちがこれから交わす言葉の数々を、頭が勝手に予測していく。「沙穂ってあんな子やったんやー。良い子ぶっとったクセして。ウチら、ずっと沙穂に裏切られとったんやで、なあ、那子」 ――もう、あんな子と話すのやめようや。 確信めいた予想に、心臓が音を鳴らす。
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