1.悪戯メッセージ

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「やっぱり出来とう。すげえな。なんでお前、授業中に次出る宿題終わらせられんの?」 「まあ、都留が出す宿題なんか大抵予想できるし」 落ちこぼれを作らない方針である彼の授業は、非常にゆっくりと進む。宿題を終わらせる隙など、探さなくてもありふれていた。 それでも落ちこぼれている圭輔にこのからくりは言えない。 「授業前に写させてもらおうにも、お前遅刻しておらへん可能性あるからなあ。今のうちに写しとかんと」 自分でやるという選択肢は最初から無いらしい。呆れてため息を吐く。大体、俺の遅刻は最近確実に減っているはずだ。祝、遅刻魔卒業。 「あれ、最後の問題まだやん」 脳死状態で答えを書き写していた圭輔の手が、ぴたりと止まる。 「あー、それわからんかったんよな」 「あ、梶さん。多分それまだ習ってない範囲ですよ」 「えっ、みんなもうさっきの数学の宿題やってんの?」 いつの間にか、佐山とりっちゃんまで俺の机に集まってきていた。これで教室の中の群れは、四対二対、一……。 「え、でも佐山出来てるやん」 佐山のノートを覗き込む。几帳面に文字が並ぶそれは彼の人柄をよく表しているように思えた。 「俺は前の学校でやってたんです。和と差の積っていう公式を使うんですけど」 「ふーん。じゃあ、これが宿題に出たのは都留のミスってこと?」 「まあ、たぶん。いや、俺が転校してくる前に習ってたなら知らないですけど……」 「教科書の順番通りに進んどるから、それは無いと思うけどなー。……あ」 「ん? どうした、森也?」 圭輔が首を傾げる。 ……ここで仕掛けるか?  こういうのは日が経てば経つほどこじらせていく。今のうちに、俺が……。きゅうっと縮まっていく心臓に、鞭を打つ。行け、俺。 「なあ、沙穂ちゃん。宿題の最後の、もんだい、やねん、けど……」 だんだん自分の声が弱くなるのがわかった。クラス中の視線が突き刺さる。
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