1.悪戯メッセージ

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佐山も驚いたのか、彼女を凝視している。圭輔に至っては口を半開きだ。幽霊にでも遭遇したかのような反応である。 「あ、ごめんなさ、い……」 間違いを恥じるかのように、また俯く。謝る意味がわからない。いじめられっ子の顔。びくびくと怖がりながら、一方的に俺を敵だと突き放す。 「ううん、どうかした?」 出来るだけ笑顔を保ちながら、話を促す。さっきの反応はどうも気になる。 「あ、違うねん、ただ、佐山くんが……」 佐山が?  「おれ?」 きょとんとしながら、佐山が人差し指を自分に向ける。 「LINEって、佐山くん、ガラケーやからLINEやってないって……、こないだ……」 「ああ。そう言えばそんなこと言ったね。実はつい最近買ったんだ、スマホ」 そう言って微笑む彼。ごく自然なやり取りだが、この二人、いつの間にそんな話をしていたのだろうか。 「そうなん、だ」 何か重い病気に侵されているかのように。沙穂ちゃんは弱々しく笑い返す。弱いよ、本当に。友達に無視されただけでそんな風になってちゃ、これから生きていけない。いじめというものは、この程度で終わってくれない。 話は終わったと判断したらしい、圭輔と佐山は教室の奥へと歩いていく。仕方なく俺も二人の後に続く。 「てか、佐山、いつの間に沙穂ちゃんにLINE聞かれてたん?」 「あー、ほら。転校してきたばかりの時、彼女に学校説明してもらったじゃん? あの時、話の流れでさ」 「へえ」と相槌を打つ圭輔。 ……ガラケー。LINEやってない。最近買ったスマホ。ID。 「梶さん」 「ん?」 深みにはまっていきそうな思考を呼び戻す。佐山が自分の英語のノートを破きながら、俺を見ていた。 「圭輔にID渡しておくんで、あとで梶さんも追加しておいてくださいね」 「ああ、りょーかい」  symy……。佐山が、さっきのノートの切れ端にIDを書き込んでいく。名前をローマ字にして、母音を抜いたものに、三桁の数字。誕生日だろうか。ありきたりな文字列。それにしても。 近くにあった机に腰を下ろす。持ち主をとりあえず確認するが、りっちゃんの席だったので大丈夫だと判断。そのまま座らせていただく。 それにしても、先ほどの沙穂ちゃんと佐山の会話が、やけに引っかかるのはなぜだろう。
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