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――わたしたちの噂学校 掲示板サイト
「噂の人殺しカメレオンが、転校した件@鷹谷」
「コメント」
「ああ、Kを自殺させた奴?」
「そうそう」
「死んでないだろ?」
「未遂よ。とっくに復帰してる」
「三階から飛び降りたんだよね? めっちゃ騒がれてた」
「で、どこ行ったの? 転校先は?」
「亀之湖中学校ってところらしい。兵庫の田舎」
「次の被害が出るな、気の毒すぎるわ」
「待って。自分、亀之湖の生徒なんですけど」
「え? まじで?」
…………
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*
なんで。声が出なかった。佐山の、何を考えているのかわからない眼が、俺を圧倒して離さなかった。
沙穂ちゃんじゃない。悪いのは全部、佐山なんだよ。教室中に向けて叫ぼうとしたのに、何も言えなかった。
どうして、ここで俺は躊躇うのか。それを考えたとき、はじめて「違う」のだと気付いた。必死になってメールの真相を追いかけたところで、もう、そんなものは関係なくて。
じり、と焦りが俺の心臓を厭らしく突く。
「学級委員さーん。都留先生が呼んでましたよー。優等生ポイント稼ぎ頑張ってくださーい」
クスクス。クスクス。アイの笑い声に紛れて、那子の笑い声も。アイがりっちゃんと目を合わせる。彼は、従うように愛想笑いを浮かべた。
アイが空気を支配する。アイの思うがままに。教室が色を変えていく。
「なあ、あい……」
かすれた声が、出た。
「んー? どうしたん森也」
多分もう、このときには、俺はすでに諦めていて。ただ少しの使命感に従って、言葉を紡いだ。
「もし、あのメールが、誤解だったとしたら、おまえは……」
「は?」
アイの目が、睨むようなそれに変わった。少しの恐怖感と、「ああ、やっぱりか」という脱力感が、俺を襲う。
今更なんだ。
「場」がかき乱されることを拒んでいる。
ただ、佐山と二人だけで話をする必要がある。わからないことで溢れている状況は何も変わっていないのだから。
「佐山」
放課後。教科書を鞄にしまいながら帰る支度をしている彼に声をかける。いきなり、一緒に帰ろう、なんてやっぱりおかしいだろうか。
でも、相手は俺の言いたいことに気付いているはずだ。
「なんですか、梶さん」
「森也、佐山、一緒に帰ろうぜー」
こんな時に限って、圭輔はタイミングが悪い。
「りっちゃんも一緒に帰るやんなあ。奥山商店で駄菓子買って帰ろうや」
小学生か。奥山商店はこの学校の近くにある駄菓子屋だ。菓子の他に食料品や文房具、さらには衣服なんかも売っており、「駄菓子屋」の枠を飛び出た不思議な店だ。
「俺、今めっちゃキャベツ太郎食いたいねん」
あれ、なんぼやったっけ。えーと、二十円ちゃうかった? まじか。やっすいなあ。
スナック菓子の話題で盛り上がりながら、圭輔とりっちゃんが教室を出ていく。
「俺たちも行きましょうか」
佐山がそう言って、鞄を手に持った。
「……おお」
渋々、返事をする。仕方ない。話し合いは延期としよう。
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