1.悪戯メッセージ

2/26
前へ
/145ページ
次へ
2013年、春。 「……ねむ」 いつにも増して落ち着きの無い教室のなか。あくびを噛み殺す。 「なあ、森也(しんや)。あの茶色っぽいの、染めてると思う?」 「いや、地毛やろ」 斜め前の席から、ひそませ切れていない声が届けられる。それを適当にあしらって、教壇の前に立つ人物に目をやった。 「はじめまして」 うちのクラスに転校生らしい。 一番後ろの席で肘をつきながら、俺はため息を漏らす。 環境の変化は好きじゃなかった。 彼の吊り上がった細い眼を睨む。東京から来たらしい。 転校生だというのに、それらしい緊張も見せず堂々としている。 その態度が不自然に見えてしまうから、不安を誤魔化すように窓の外へ目線を移した。 相変わらずの田園風景。緩い風が、蓮華畑の花を撫でた。 「これからよろしくお願いします」 ――わたしたちの噂学校 掲示板サイト 「噂の人殺しカメレオンが、転校した件@鷹谷」 「コメント」 「ああ、Kを自殺させた奴?」 「そうそう」 「死んでないだろ?」 「未遂よ。とっくに復帰してる」 「三階から飛び降りたんだよね? めっちゃ騒がれてた」 「で、どこ行ったの? 転校先は?」 「亀之湖中学校ってところらしい。兵庫の田舎」 「次の被害が出るな、気の毒すぎるわ」  ………… ――この記事にコメントする
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4728人が本棚に入れています
本棚に追加