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2013年、春。
「……ねむ」
いつにも増して落ち着きの無い教室のなか。あくびを噛み殺す。
「なあ、森也。あの茶色っぽいの、染めてると思う?」
「いや、地毛やろ」
斜め前の席から、ひそませ切れていない声が届けられる。それを適当にあしらって、教壇の前に立つ人物に目をやった。
「はじめまして」
うちのクラスに転校生らしい。
一番後ろの席で肘をつきながら、俺はため息を漏らす。
環境の変化は好きじゃなかった。
彼の吊り上がった細い眼を睨む。東京から来たらしい。
転校生だというのに、それらしい緊張も見せず堂々としている。
その態度が不自然に見えてしまうから、不安を誤魔化すように窓の外へ目線を移した。
相変わらずの田園風景。緩い風が、蓮華畑の花を撫でた。
「これからよろしくお願いします」
――わたしたちの噂学校 掲示板サイト
「噂の人殺しカメレオンが、転校した件@鷹谷」
「コメント」
「ああ、Kを自殺させた奴?」
「そうそう」
「死んでないだろ?」
「未遂よ。とっくに復帰してる」
「三階から飛び降りたんだよね? めっちゃ騒がれてた」
「で、どこ行ったの? 転校先は?」
「亀之湖中学校ってところらしい。兵庫の田舎」
「次の被害が出るな、気の毒すぎるわ」
…………
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