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「誰でもええけど。嫌なん?」
「ちゃうけどさ。Fは、ほら、あれよ。ファンタジックのFや」
「はあ? だっさ。そんなださかった?」
「森也が説明しろ言うたんやんか」
「言うたけど。そんなんやった? 俺もっと違う単語やった気すんねんけど」
首を傾げる俺に向かって、圭輔は気のせいや、ださくて悪かったな、と文句を連ねる。
うちの学年は人数が極端に少ないため、1クラスしかない。だから、クラス名など本来存在しないのだ。
Fは、小学校のときに圭輔たちが勝手に決めた非公式の呼び名である。
「三年ファンタジック組かあー。へえー」
露骨だな。棒読みの佐山に呆れながら、俺はこいつの顔って最近はやりの爬虫類顔だなあ、と関係のないことをぼんやりと考えていた。
数学の授業中。
ノートにシャーペンを走らせながら、俺は後ろに座る転校生を気にしていた。
今は物珍しいから人気者扱いだが、ほとぼりが冷めたとき彼はどんなポジションに収まるのだろうか。
「梶、お前は途中式書けって何回言わせるねん」
「おお、都留。いつの間に背後に」
頭上から降って来た声に驚いて顔を上げると、そこには数学担当かつクラス担任の姿があった。
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