1.悪戯メッセージ

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「お前、聞いたぞ。また遅刻したらしいな。毎日毎日」 「朝弱いねんもん……」 「言い訳になるかあ」 彼が振り上げた巨大な三角定規を慌てて掴む。 「待った待った。ほら、あそこのアホが問題解けんくて困っとうで。行ったらな」 「誰がアホや」 俺の言葉が自分に向けられていると即座に理解したらしい。振り向いた圭輔からの抗議が投げられる。 「こら喧嘩すんな。渋谷(しぶたに)、どこがわからんねん」 「全部わからんくて話にならん」 自覚しているとは。意外と謙虚な奴だ。 「先生と仲が良いんですね」 いきなり背中へかけられた声に驚きながら、振り返る。そこには、つまらなさそうに俺を見る佐山がいた。 与えられた課題はすべて終えたらしい。シャーペンから手を離している。 「ふーん、勉強できるんや……」 「あ、意外です?」 「いや別に。……で、なんか言った?」 「変わったクラスですね。授業中に私語があるとは」 ぎょっとして佐山を凝視する。こいつ、今までどんな学校に通っていたんだろう。 いよいよ厄介だ。過ごしてきた環境がこうも違うとは。 「……普通じゃないですかね」 「そうなんですか? へえ、俺も馴染んでいかなきゃですね」  ……馴染む気はあるのか。シャーペンを握りなおしたときだ。 「あーっ」という叫び声が教室に響いた。
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