1.悪戯メッセージ

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「で、アイは何してん?」 「ん?」 スマホに向けていた顔を上げるアイ(ちなみに本名を愛あい加かというが、二文字に憧れるという謎の理由で、周りにもあだ名呼びを強制させている)。 大きくうねった黒い髪と健康的な肌の色が特徴的な彼女は、普段なら圭輔に負けないぐらいやかましい存在だ。 「やたら静かやん。気持ち悪いねんけど」 「ええやろ、ウチがたまにはおしとやかでも」 「一向に構わんです」 ぜひとも今後もその調子で。 「なんか腹立つ」 アイは、ジロリと俺を一睨みして、またスマホの画面に視線を戻した。 「……何を一生懸命見てるの?」 りっちゃんが、卵焼きを突き刺したフォーク片手に首を傾げる。 「なんでもええやろー。メールよ」 「はあ? 誰と」 不思議そうに尋ねるのは圭輔。それもそのはずだ。コミュニケーションツールとしてはLINEが一般的な現代で、一生懸命にメールを打つ姿は少し異様である。 「誰とって、同い年の男の子とやけど」 「はあ?」 圭輔が眉根を寄せる。いや、彼だけじゃない。その場の全員が怪訝そうにアイの顔を見る。 「おい、アイ。もしかしてお前、出会い系……」 「は?」 「中学生がそこに手ぇ出すなよ。写真詐欺のおっさんしかおらんぞ」 「ほんま失礼やな、あんたら! そんなんとちゃうわ。放っといてよ、こっちは真剣やねんから」 「真剣……って」 よくわからないが、彼女は妙に気が立っている。これ以上何を聞いてもアイを苛立たせるだけだろう。仕方なく俺たちは押し黙る。 「……あ、沙穂ちゃん、佐山くん」 りっちゃんが声を上げたのを合図に、その場の全員が教室の入り口に目をやった。 「アイの怒鳴り声が聞こえてきたけど。なに、修羅場?」 さして関心も無さそうに佐山が言う。その後ろには、沙穂ちゃんが気まずそうに立っていた。 「いや、大したことないから。で、そっちは? 学校説明やっけ。終わったん?」 二人に話しかけながら、俺は圭輔が押し付けてくるプチトマトを全力で拒む。  「あ、うん。それは大丈夫」 「小さい学校ですからね。教室の場所を覚えるのも問題なさそうです」 そう言って笑顔を作る佐山に、小さい学校で悪かったな、と文句をつける圭輔。 「簡単に機嫌損ねんなって。木造平屋の学校なんか日本中探してもうちだけやぞ。誇りを持て」 仕方なく、圭輔からプチトマトを受け取った。
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