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プロローグ
「梶さんは、俺が犯人じゃないと困るんでしょう」
村唯一の喫茶店。
古民家を改装したらしい建物は、窓が少なく朝の9時でも薄暗い。
カウンターの奥に、ひとつだけ4人掛けのソファ席がある。
そこで俺たち2人は向かい合っていた。
目の前の転校生がその嫌らしいにやけ顔で、俺の戸惑いを観察している。
「困る? 俺が?」
「ええ。だって、俺じゃないとすると、犯人は他のクラスメイト。もう、誰も信じられないじゃないですか」
「……」
考えないようにしていた事実を突きつけられ、何も言えなくなる。
「そこで提案があるのですが。
裏サイトに書きこみをしたヤツを一緒に探しませんか?」
ーーは?
「ことわる」
考えるより先に拒否の言葉が放り出された。
……誰が好き好んで、こんな不気味なヤツと行動するって言うんだ。
「どうして? 疑わしくないのはクラスで俺だけですよ」
「お前、自分の無罪を証明するようなこと何も言えてないだろ。お前が1番怪しいのは変わってねえよ」
俺が声を荒げても、この男は表情ひとつ変えない。
メロンソーダのグラスから、水滴がこぼれ落ちていく。
ーーああ、もう嫌だ。誰かが確実に嘘をついているこんな状況。
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