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残像
僕らは防具をもって、僕らは竹刀を持つ。
いつもと変わらない、稽古帰りの道。
いつものように僕ら兄妹は家へと続く横断歩道を渡った。
その時違ったのは青信号が「止まれ」だったこと。
轟音で振り返れば走る凶器と化したトラック。
過ぎた後には砕けた、あるいは裂けた防具、割れた竹刀。その成れの果て。
そして、はるか遠くで横たわる、妹。
どす黒い鉄の臭いが辺りを包んだ。
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